明治以来の重苦しい結婚や結婚相談をめぐる状況にホッと
息をつかせてくれたのが大正浪漫といわれる時代でした。
私の母も大正生まれだったので、どこか自由でロマンチッ
クな気風を持ってたような気がします。
なんでも女学校時代のまだうら若い担任の先生が自由闊達
な思想の持ち主で、しかもお洒落で教養があって綺麗だっ
たので女学生たちのヒロインというか、憧れの的であっ
たとか。
その先生の感化を受けて、親友だった、、ちゃんとよく港
を見下ろせる丘の上に寝そべって未来の夢を、時間を忘れ
るようにして未来の夢を語り合ったそうです。何だか目に見
えるようですね。
この時代には大衆向けの雑誌とかがたくさん出てきて、西
洋の風俗や先駆的な考え方が堰を切ったように入ってきた
と言われています。
例えば建物にも今までの和風建築に加えて洋風建築が目立
ち始めました。カフェやレストランという横文字のお店で
フォークとナイフで洋食を味わうというのもあたりまえに
なりました。
ファッションにしても和服に代わって活動的な洋装が増えて
きました。その他イヤリングをつけたり、お洒落な帽子を
かぶったりとか、、、。なんだか楽しそうですね。
当時の和洋折衷のファッションは結構今でも人気がある
うです。
結婚についても民法が少し改正されて、男子が三十歳、女
子が二十五歳になれば、親に反対されても本人たちの合意
があれば結婚できるようにもなりました。
したがってラブレターなどもやり取りされるようになりま
した。中にはおっちょこちょいな男子学生もいて、ラブレ
ターの文頭に「変しい変しい、、、様」なんてやらかした
りとか。まあ、多分「恋」という言葉に馴染んでいなかっ
たのでしょう。
でもそうやってせっかくラブレターをいただいても、親に
は極力内緒です。バレないように学校から帰ると真っ先に
郵便受けを覗いたり、そんなご苦労はあったようです。
でも大正浪漫時代の結婚もお見合い結婚が主流でしたし、
家柄のバランスというのが重視されました。ですから現実
には純粋な恋愛結婚というのは珍しかったようです。
ただお見合い写真というのは当たり前になってきたので、
それまでのようにお見合いの場が初お目見えで、結婚即決
というケースは少なくなったのでしょう。
今とはもちろん違う形でしょうが、結婚相談というのも出
てきました。結婚したい男女の情報の解放という意味での
結婚相談というわけです。
ただ女性は良妻賢母たるべく教育を受けてきたので、いま
の結婚相談所と違って成婚する確率は格段に高かったのだ
と思われます。とにかくおしとやかだったものですから。
身代わりお見合いなんていうインチキもできなくなりました。
そうなんです、時々身代わりお見合いなんてのがありまし
た。嘘みたいなホントの話です。
姉の方がいい年齢になってきたので早くかたづけたいけど
残念ながらご器量の方がイマイチで、それに比べて妹の方
はまだ若いけどご器量がよろしいという場合なんか、つい
つい親心といってしまえばそれまでですが出来心が忍び寄
ってくるわけです。
どうせお見合いといったってお互いろくすっぽ顔を見るわ
けでもないし、姉のお見合いの代役に妹をなんてことが起
きるわけです。
そして結婚式の時にはもちろん本命のお姉さんがちゃっか
り新婦の席に座るというウルトラC並みの荒技が行われる、
ことだってなきにしもあらずだったのです。でも結婚して子
供も生まれてしまうと笑い話になってしまったそうですか
ら、まあ、随分とおおらかな（すぎる？）時代であったこ
とは間違いありません。
旦那が言うには、なんか10年もの間なんかおかしいおかしい
と思ってたが、なるほどそういうことだったのね、で万事メ
デタシメデタシとなったのでした。
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