フランス人冒険家が極北を旅して、イヌイット（エスキモー）
の家族に一宿一飯にあずかりました。夜長の徒然に彼は故国
で流行のシンデレラ物語を語って聞かせました。
それを聞いたイヌイットのお父さんとお母さんはとてもビッ
クリしました。なんてロマンチックなお話なんだろうと思っ
たからではありません。
まさか、かの国フランスとかヨーロッパの国々ではこんな話
を子どもたちに話し聞かせているのだろうか、と思ったので
す。こりゃトンデモナイことだと慌てたのです。
実を言うと、僕たちが知っているシンデレラはパクリです。
元ネタは神話の世界の地球的ベストセラー、いやベストテラ
ーですか。父さんや母さんが幼い子どもたちに絵本代わりに
話して聞かせたものです。
同工異曲で世界中で語り継がれてきた物語。驚くべきことに
今まで判明しているだけでも、六百以上の全く同じような筋
書きの物語が世界中で発見されています。
とても偶然の産物とは思えません。その物語の中にはこれか
ら大人になっていく子どもたちにぜひとも伝えておきたい重
要な教えと言いますか、人としてのモラルとか戒めの意味合
いが含まれていたのでしょう。
それが昔々から何万年もの間、口から口へと語り継がれてき
たものだったのです。
そんなお話がどこからどう伝わったのか、近代の黎明期に、
フランス宮廷で皇太子用に編纂されました。いかにも王子様
が喜びそうな、思えば軽薄なハッピーエンドの夢物語に変わっ
てしまったのでした。
さらに後年、デイズニーがアニメ制作の為に書き下ろし、現
在のシンデレラ物語が出来上がったというわけですね。
ですから私たちが知っているシンデレラ物語は、元々のモノ
とは似ても似つかぬというか、内容的にはまるで正反対の
ものなのです。
不遇な少女が、女性たちの憧れの男性と結ばれるいうハッピ
ーエンドは変わりません。しかしこのデイズニーモデル
はイヌイットたちにとっては堪え難いものだったのです。
第一に、王子という虚名に群がる若い女性像という設定
第二に、オシャレを競うファッションショーだった、
第三に、王子が選ぶのが最も美しいドレス姿の女性だった。
いかかでしょう？何かとても大切なものがすっぽりと抜け落
ちているような気がしませんか？
イヌイットが子どもに語り聞かせた物語では全くと言ってい
いほど趣きが違ってきます。
彼ら彼女らの世界には王子様なんていう人種はいません。娘
たちの憧れの的は猟の名人ということになります。
そんな猟の名人である青年の元には、娘たちが精一杯着飾っ
て大勢現れます。しかし、彼はそんな娘たちには見向きもし
ません。彼の心を射止めたのは、とても粗末な身なりをして
お化粧っ気のケの字もない目立たない娘でした。見た目は
誰よりも平凡なのですが、彼にはその奥に光り輝いている綺
麗な心がはっきりと見えたのです。
むつみ会結婚相談室でもそれに似た話がありました。お見合
いの時、膝の上に置かれた女性の手がとても荒れていたので
す。男性はまさにその荒れた手のひらを見て即座に決心された
のです。「この人しかいない」と。
この人はきっとこれまで人に言えないような苦労を重ねて生
きてきたに違いない。なのに表情にも話し方にもそんな苦労
の影すら見えない。どんな苦労も笑顔で乗り切れる、奥ゆ
かしい、優しい女性なのだろう。ではこの僕が今までの苦労
が報われるような愛情と幸せを注いでやりたい。
エンパスというのは、empathy(共感）能力が高い人のことで、
他人の喜怒哀楽を自分のことのように感じてしまう傾向のあ
るひと。その逆は何かといえば無論、”サイコパス”。
どういうことかといえば、他人の悲痛に対する共感性が低く
人を傷つけることにさほど痛痒を覚えない人のことをいいま
す。恋愛の喜びも結婚の幸せもエンパスの人のもので、サイコ
パスの人のものでは断じてないと私は思います。
そうでしょう、、、？だってあなたならエンパスの人と一生を
共にしたいですか？それともサイコパスの人？
今更言うまでもありません。どんなに美人で、あるいは美男子
で、さらに知性があって社会的地位があってもです、
他人の気持ちなど斟酌しない利己的な相手であったら、家庭は
たちまち歪んだものになります。またそういう家庭で育った
子どもはどうなることでしょう。
そこは悩みの種を次から次から次へと生み出すだけの家庭に
ならざるをえないでしょう。
そうならないための深い知恵をイヌイットの人たちは持って
いたし、何よりも大切にしていたのでしょうね。
　　　　　　　　　　（　、、、②に続く）