＜Fさん＞
「ところで、恋愛願望というのが今の若い人たちの普通の
スタイルになってますけど、それが未婚者が増えて行く大
きな原因になっているような気がしてなりません。
だって恋愛願望を満たしてくれる人って、男性にしても女
性にしてもごく限られていると思うんですよね。
どうしても一握りの男女だけが結婚の対象になってしまう。
そういう問題についていろんな人たちの結婚の橋渡しをし
ている立場からしてどう見えているんでしょうか？」
＜由美子＞
「むつみ会結婚相談室では、今はやりのパーテイー式の出
会いの場を作る試みをいち早くとりいれました。会員の皆
さん同士でパーテイーやらピクニックやら懇談会みたいな
ものとかやりました。それだけでなく職域の組合の人たち
と連携して、例えば県庁の何々の独身男性と、保母さん
とか看護師さん同士の、とかもやりました。
でもある時からスッパリ止めにしました。第一印象とかで、
ほんの一部の人たちの人気が集中してしまう傾向にどうし
ても納得がいかなくなったからです。
そんなもんじゃないでしょう、というのが私たちの正直な
気持ちでした。なんかすごく上滑りしてる感じっていうか。
私たちとしては、一人一人の会員さんの、一人の人間とし
ての良いところも悪いところも、ある程度は分かっている
つもりですから、一人一人を上っ面でなく、しっかりと見
つめてほしいなという気持ちが強いんですね。
ご家族との、ご両親とかですね、との交流もありましたか
らそういう面も含めてしっかりと判断してほしいなと思っ
ていました。
そういういろんなものを踏まえた上での恋愛結婚ならもち
ろん言うことなしですが、そうではない場合何かしら一本
芯がかけたような気がするんですね」
＜Fさん＞
「やっぱりそうですか。恋愛結婚といえば聞こえはいんで
すけど、ある意味ではすごくワンパターンにはまってしまっ
てるような気がしてましたけど、そういう感覚は間違っては
いなかったんですね」。
＜由美子＞
「はい、そうだと思います。アッそれからですね、恋愛結
婚がいいとかなんとか言う前に、そもそも結婚願望がある
のかないのか、あったとしてもそれがどういうものなのか
ということがあると思います」。
＜Fさん＞
「結婚願望ですか。僕の知ってる限りでは、強いか弱いか
の違いはあっても、ある年齢に達するとみんなあるような
気がしますけど」。
＜由美子＞
「むつみ会結婚相談室がスタートしたころ、つまり結婚相
談というのが、あっても非常に珍しかったころと、あって
当たり前になった今とでは、ずいぶん状況が違いますね」。
＜Fさん＞
「へえ、どういう点でですか、変わってるというと」
＜由美子＞
「むつみ会結婚相談室ができたのは半世紀前のことですから
もちろん私自身が見聞きしたことでなくて、亡くなった義母
が言ってたんですけどね。
そのころは結婚したいという前に、適齢期と言うのがあって
それまでには結婚はしなければならないという暗黙の了解み
たいなものがあったんですね、いい年齢になっても独身とい
うのは、何か肩身がせまいというのがありました。
結婚はしないという選択肢はまず考えられなかった。でも今
はそれも選択肢の一つになってきているような気がします」。
＜Fさん＞
「わかります。うちの親たちもしきりにそんなこと言ってま
すから。あんたねえ、結婚もせんでどぎゃんすっとね、、な
んて、もうそりゃ否応なしですよ。そんな時世代の違いという
のをすごく感じますね。
ところで、どんなでしょう、どのあたりからそういう違いが
出てきたのだと思いますか？」
＜由美子＞
「世の中の不景気とか、女性の経済的自立とかはよく言われ
ていますが、もちろんそれはあるにしても、それだけで説明
できるかというと、できないような気がします」。
＜Fさん＞
「へえ、その説明できない部分とはどういったですか？」
＜由美子＞
「結婚しない、というのと結婚できない、というのは全然違
います。今は後の方、つまり結婚できない、したくても、と
いうことですね」。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜続く＞