馬（や鹿）になる方法

「馬（や鹿）の方が人間より優れている」
といったのはトルストイです。
慧眼というべきで、確かに馬（や鹿）は今日を充実して楽しい一日にする術を知っています。

それに比べて（今時の）人間はというと……
明日は何を着ようか食べようかと思い患うことしか知りません。
来る日も来る日も、墓場の前まで、明日の心配で頭をいっぱいにしながら生きていきます。

人生設計という幻想

「人生設計」なんて尤もらしい理屈をつけて、結局は懐に入れるばかりで、出すことを知りません。
そうして、なぜか絶望死とやらがやたら増えていくのです。
自然死できるはずなのに、自ら命を断つ——これを精神のデフレ現象といいます。心が破産したわけです。

「優れた人間」への試金石

二十一世紀という時代は……
「馬（や鹿）より人間の方が優れている」になれるかどうかの試金石になる気がします。

あなたはどちらを選びますか？
生きること？ それとも死ぬことですか？

どうすれば生きることができるのか、
一人々々の胸に問いかけることから、明日という日は始まるような気がします。

お金では安心を買えない時代

金利ゼロとかマイナスとか、利潤ゼロとかマイナスとか……
日本は20年以上もそんな時代を生きています。
せめて馬（や鹿）より利口になれるいい機会ではないでしょうか。

もはやお金では安心を買えない時代になったのです。

“母馬を子馬が追へり風も追ふ” 小石秀子

お金に命を与える方法

金利がマイナスということは、せっかく溜め込んだおカネも目減りしていくということ。
（相続も同じことです）

そうならないためにできることは、ただ一つ。
おカネに困っている人に、気前よくばらまくことです。

『富貴とは有限の位置エネルギーである』
——メディチ家のコジモ

おカネを溜め込めば溜め込むほど、世の中はデフレになる。
それはちょうど、脳血栓のようなもの。

お金の価値観が逆転する時代

これからは事情が逆転します。
お金儲けが下手くそな人（気前がいい人）ほど利口で、
お金儲けが上手な人はバカに見えてしまう時代です。

この価値観の転換が、結婚や家族にも深く関わっているのかもしれません。

輝いていた新婚の風景

熊本の結婚相談所「むつみ会」がスタートした頃。
今とは比べ物にならないほど、多くのニューカップルが誕生しました。

あの頃の新婚さんは、安アパートの一室から始まりました。
親の援助もなく、二人で力を合わせて未来を築いていく。
夢や思いやりがあれば、たとえ貧しくても幸せになれる。
そう信じられる時代でした。

モノやカネが絆を蝕む

けれど今は違います。
豊かになったはずなのに、幸せになれたとは限らない。

心と心の絆は、モノやカネの感情が入り込みすぎると、どこかで狂ってしまう。
そして、なかなか修正がきかない。とてももろいのです。

“暮らす”と“生きる”のちがい

時代は変わり、今は潮目。
“生きる”より“暮らす”に意識が傾き、受け身の「不幸ではない」状態に甘んじるようになってしまった。

でもそれは、「不幸ではないこと」が壊れるのが怖くなる、という生き方です。
そうなると、家庭や家族といったコミュニティさえも、壊れやすくなる。

明日という日を始めるために

というわけで、もう一度この問いに戻ります。

「馬（や鹿）より人間の方が優れている」
——それを証明できるかどうかが、二十一世紀の課題です。

あなたはどちらを選びますか？
生きること？ それとも死ぬこと？

どうすれば生きることができるのか——
一人ひとりが胸に問いかけることから、明日という日は始まるような気がします。