大正ロマンが運んだ“西洋の風”と変わらない恋愛観

大正時代、いわゆる「大正ロマン」と呼ばれる西洋文化の波が庶民の暮らしに流れ込み、生活スタイルは少しずつ変わり始めました。服装や建物、言葉の使い方などにモダンな風が吹き始めたのです。

しかし、恋愛結婚が当たり前になるには、まだまだ時間がかかりました。

たしかに法律上は、当人同士の同意さえあれば結婚できる仕組みにはなっていましたが、現実の社会的常識はそう甘くはありません。結婚はあくまで「家と家との契約」「子孫繁栄の義務」といった意識が根強く残っており、恋愛で結婚するという考え方は、いまだごく少数派だったのです。

パラダイムは簡単には崩れない

こうした古い常識のことを、現代風に言えば「時代のパラダイム（枠組み・先入観）」と言えるでしょう。このパラダイムは、よほど強い社会的衝撃でもない限り、簡単には崩れません。

たとえば21世紀に入り、学歴社会は崩れつつあると言われながらも、多くの親は依然として子どもを塾に通わせ、「いい大学・いい会社」を目指させています。これは、変化の難しさを如実に表しています。

恋愛結婚に対する風潮も同じでした。

「理性的な恋愛」を推奨した時代

恋愛が社会の話題になると、当時の言論界ではこう語られ始めました。

「恋愛はしてもいい。ただし“衝動的”な恋愛は性秩序を乱し、モラルを堕落させる」
「恋愛をするなら“理性的”に。熱くならず、冷静に」

冷静な恋愛。ホットにならず、クールに。
……恋愛をこんなふうに型にはめてしまって、本当に恋愛と言えるのでしょうか？

私たちからすれば首をかしげるような考え方が、当時は正論として通っていたのです。

戦時中に急増した“国家のための結婚相談所”

戦争が深刻化するにつれ、国が主導する「結婚相談所」が次々と開設されていきました。

• 昭和15年：厚生省による「優生結婚相談所」が三越デパート内に誕生

• 昭和16年：「東京市結婚相談所」が設置

• 他にも：移民向け、傷痍軍人向け、婦人団体、青少年団体などが運営する無数の相談所が登場

ですが、これらの目的は「個人の幸せな結婚」ではありませんでした。
すべては国家の非常事態＝戦争に奉仕するため。

「産めよ増やせよ」――文字通り、人間を“兵士の供給源”として扱った結婚政策だったのです。言ってしまえば、人間を“管理繁殖”するための仕組みに他なりませんでした。

結婚相談所が“未亡人製造所”になった時代

戦時色が強まると、オシャレどころか、男女ともに国民服やもんぺ姿が当たり前に。化粧も禁止され、個性や好みを表現する余地は一切なし。
結婚相談所の現場でも、好き嫌いを言う余地などなく、理想の相手像を語ることは“わがまま”とされ、すぐに却下されました。

相談員の仕事は「人と人の出会いをつなぐ」ことではなく、まるで“人間の組み合わせ機械”のような作業だったと言っても過言ではありません。結婚相談所というよりも、結婚製造ライン――そんな存在だったのです。

そして、ようやく結婚できたとしても、すぐに夫に召集令状が届けば、花嫁は即・戦争未亡人に。運良く生還すればまだしも、多くは戦死し、日本中に若き未亡人が溢れました。

結婚相談所は、幸せを作る場所ではなく、いつの間にか“未亡人製造所”と化していた――そんな時代が、たった80年前に実際に存在していたのです。

結婚相談所の「原点」を忘れないために

現代の結婚相談所は、出会いの多様性を尊重し、個人の幸せを第一に考えるサービスへと大きく変化しています。

しかし、過去にあった“結婚の闇”や“国家の道具としての結婚相談所”の歴史を知ることは、今の時代を生きる私たちにとって大切な意味を持ちます。

私たちむつみ会結婚相談所は、ひとつひとつのご縁を人間的に、丁寧に扱っていきたいと願っています。

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