人間いたるところに青山あり・その１
（ジンカンイタルトコロ二セイザンアリ）
、
”人間”は”ジンカン”と読み、世の中のことです。そして、青
山とは墓場のことです。骨を埋める場所なら、生まれ育った
在所だけでなく、日本中（世界中）にあるわけだから、どん
どん外へ外へ出っぱって行って、大躍進するがよろしい、と
いうなんとも勇ましい金言です。・・・ってなことで、社会が
大いに発展繁栄していったのでしょうかね。
おかげさまで、青年諸君はひたすら故郷を親や家族から逃亡
するようにこぞって都会へ押しかけ、結果としてニンゲンと
コンクリートの無機質なジャングルが出現しました。その一
方では、地方が目も当てられないほど寂れていきました。
そしていま、発展繁栄を金科玉条に営々と積み上げられた積み
木の塔があえなく崩れかけています。フロンテイア・スピリッ
トも肝心のフロンテイア（未開拓）が食いつぶされれば、跡
にはスピリットだけが当てどなく空中を漂います。
未婚率が増加の一途を辿っているのも、そんなスピリットの
亡霊の呪いのようなものなのでしょう。せっかく結婚しても
人形の家さながらの家庭が目につくようになり、核家族が習
いになり、その結果独居老齢者やら孤独死とやらが増えまし
た。
確かに、人間いたるところに青山あり、なのですが、その青
山はただ骨を埋めるというだけの場所になり果てました。お
盆になりますと、青山のお墓というお墓には業者さんの手で
ずらりと（同じような）造花が活けられ、道端では赤い曼珠
沙華がひっそりと、どこか切なそうに咲いています。臨終は
病院のベッドでどうぞ、だし、息をひきとったら葬儀屋さん
が待ち構えていて、葬儀屋さんには経文もウロ覚えのお坊さ
んがひっついていて、大層なお説教で締め括ったら、キャッ
シュの札束を受け取って、それでお終い、の人間（ジンカン
＝世の中）になりました。
こんな歌がなぜか身にしみてきます。
♫私のお墓の前で泣かないでください。
そこに私はいません。
千の風になって、千の風になって、
あの大きな空を吹き渡っています♫
・・・・というのが”人間いたるところに青山あり”の末路と
いうことなのでしょうか？今や生きるところも死ぬところも
手狭な人間（ジンカン＝世の中）になりつつあります。つま
りは、、、
”人間いたるところに青山なし”？？？
でもそんな人間（ジンカン＝世の中）が大きく変わりつつあ
るような気がします。
今まで私たちは”何もない田舎なんて”いっていた場所が、だ
んだんと”何もかもある田舎”へとシフトしてきました。いや、
たぶんシフトせざるをえなくなってきたのかもしれません。
信じられないような気がしますが、信じられないようなこと
が起こるのもまた人間（ジンカン）なのでしょう。
就職も結婚も地元志向になり、やがてサラリーマン社会が手
詰まりになってくれば、私たちは土に還るしかなくなります。
山と海と森と川と空と風と、温かい家庭と隣人と、どろんこ
になって遊び回る無邪気な子どもたちと、無数の生き物たち
に囲まれて穏やかに暮らす日々もそう遠い話ではなくなるの
でしょう。
そうなってくれば、私たちのような仕事、結婚相談所のよう
なものもいらなくなってくるかもしれません。思えば私たち、
つまり熊本の結婚相談所むつみ会はこんな時代がやってくる
ことを首を長くして待っていたのかもしれません。
今から六十年前、たぶん日本では初お目見えの結婚相談所な
るものを亡き母が立ち上げたのはなんだったのかというと、
日本のあの高度経済成長の負の部分を埋め合わせるためだっ
たのかもしれない、そんな気がしてきます。華やかな繁栄の
背景には広大な負の社会ステージが広がっていたのです。
経済的繁栄というまばゆいばかりの光輝と裏腹には、底知れ
ぬ闇が存在していたのでした。
植民地、人種差別、世界的戦乱の続発、テロ、無差別殺戮、
飢餓、難民、貧困、無知、共同体の解体、モラルハザード、
都市集中と地方の荒廃、富の遍在、種の絶滅、廃棄物処分
場の限界、資源の枯渇、そして自然環境の破壊等・・枚挙に
暇がないほどです。
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