社会的肩書きも収入も申し分なかったので、僕の頭のスクリ
ーンにもすっかり選良カップルとして刷り込まれていたのです。
お二人が初めて出会ったお見合いのその一日(と前日)の出
来事は今でもハッキリと憶えています。
「野田さん前日になってで申し訳ないんですが、明日のお見
合い取りやめにしてくれませんか。」
「ええ〜どうしてですかあ?そりゃもう、誰が見たってチャ
ーミングな女性なんですけどねえ。」
「写真を見せていただいたときに申し上げたように、どうし
ても気が進まないんです。本当にすみませんけど。」
お見合いの前の夜になって、Aさんから急な電話連絡をであ
る。さてと、もったいないなというのが正直な気持ちでした。
それにしても、です、こんなにギリギリになってお断りという
のは余程のことかもしれない。不愉快な思い出にまつわるこ
とか、僕たちには計り知れないような理由、そんなこともあ
ることは確かにあるんですよね。
そうは思ったんですが、なぜか知らないけど今回だけは、仕
方ないですねということで、あっさり引っ込む気になれない。
今も思えば、彼の方も彼の方なら、僕の方も僕の方ででした。
「顔が好きになれないというんですね。その件は先だっても
言いましたように、しばらく目をつぶってくれませんか。お
見合いの手数料もいりませんから、今回だけは騙されたと思
って会うだけでも会ってみてください。お願いします。もち
ろん、会ってみてもしやっぱりダメだったら、すぐそう言って
くださればいいですから。」
どうしてもこういう仕事をしていると、間に立つ人間の個人的
な好みとか、主観とかがいつの間にか入りがちなので、その
ことには日頃から極力注意しています。
大分前の話ですが、そういう調子でこの人とこの人の組み合
わせなら申し分がない、ってなことで自信満々でお見合いに
臨んだのはよかったのですが、ナント会う早々いきなり口喧
嘩になってしまいました。そりゃもう口あんぐりといったと
ころです。
お見合いの後で当人たちに訳をきいてみます、お二人ともなに
か顔を合わせて口をきいた途端にムカついてきたとか。なぜな
のか、ご本人たちにも、もちろん僕にもさっぱりわかりません。
その時身にしみました。人と人の相性なんてものは不思議千万
というか、雲をつかむようなというか、あるいは、海の底のよ
うに深くて、水面だけをいくら見てても、どうしてもわからな
い部分があるんだなあって。
そんな反面では、写真では、今では動画だって撮ろうと思えば
撮れるわけですが、それでも、そんな媒体を挟むんでしまうと、
ご本人が身に備えている人間的なオーラのようなものが見えな
くなってしまうこともよくあるんです。
Bさんという女性が正しくそんな典型のような女性でした。そ
の時なぜか、あの「モナリザの微笑み」を思い出しました。
あれは絶対に写真でも動画でも表現できない。ラファエロとい
う作家がいて、初めて誕生したのだと思いました。
瓜実の顔立ちも言うことないし、知性的でいて、庶民的でいて
、清楚だし、何よりも、そのキラキラ光る眼差しが人を惹きつ
けて離さない、Bさんという女性はそんな人だったのです。
そしてAさんは(かわいそうに?)結局僕に押し切られた格好
でしぶしぶと翌日、お見合い場所であるホテルキャッスルのカ
フェにいらっしゃいました。
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