江戸から明治へ、結婚と結婚相談の移り変わり、その３

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江戸から明治へ、結婚と結婚相談の移り変わり、その３

2022.10.9
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江戸から明治へ、結婚と結婚相談の移り変わり、その３

でも、そんな両親から生まれた母の結婚はお見合いすらなし
父の写真らしきものを見ただけで、佐賀県の呼子という小さ
な港町から、父の赴任先だった（特務機関員でした）中国の
上海へ、ナント単身で、はるばる東シナ海を渡ってお嫁に行
ったのです。
でもそれくらいはいいほうだったのでしょう。愛情があった
かのかなかったのかは知る由もありませんが、二人っきりの
新婚生活があったのは事実でしたから。
当時は二人っきりの新婚生活なんて夢のまた夢だったのです。
およそ七年間上海辺りで新婚時代を過ごしました。その間長
女と次女が誕生しました。父は職業柄命がけで中国の大地を
東奔西走していましたから、今時の結婚生活とは随分様相は
違っていたでしょう。ただ中国の人たちとは気が合ったので
しょう。日本列島の片隅の小さな港町で育った母としては、
当時としては世界最大の大都会であった上海での日々は興味
津々たるものがあったでしょうし、それに中国の人たちには
大陸的なおおらかさがあったので住み心地はとても良かった
ようです。
僕たちに当時の思い出話をとても楽しそうに話してくれたの
を思い出します。
終戦になって、上海を引き上げるときには、中国の友人知人
たちと涙を流して別れを惜しんだそうです。満州引き上げの人
たちの悲惨極まる状況とは異なり、なんだか夢のような
話です。
それに比べると、日本の内地にいる女性たちの結婚の状況た
るやずいぶん厳しいものがあったようです。
結婚と言っても、本人同士の思いや愛情などは一切合切見向
きもされない家と家の結婚のようなもので、親同士の合意だ
けで成立しました。
結婚生活もハナから男性側の親と同居で、姑（夫の母親）に
気兼ねしながらの、場合によっては大勢の同居の親族の囲ま
れての暮らしでした。
見方によっては無給のお手伝いさんみたいなものです。
それでも不平を言うことは許されませんでした。不平不満を
抱く方が悪かったのです。
そういうわけで生涯未婚率は今とは比べものにならないくら
い低かったのですが、それは本人たちの意思の犠牲の上に成
り立っているにすぎませんでした。
離婚率はどうだったかといえば、結構多かったようです。そ
れもお嫁さんがいじめに耐えきれずに出て行くというより、
お姑さんに気に入られなくて、うちの嫁にふさわしくないと
ばかりに、一方的に縁を切られるというケースがほとんど
でした。
そうやって実家に帰ってきても、出戻りなどと呼ばれて肩身
の狭い思いに耐えなければなりませんでした。
そんな時代と比べるのも酷ですが、今の女性の結婚生活は夢
のように恵まれているように思われます。
相手が一人息子であっても母親と同居なんてことは考えられ
ませんし、結婚生活が気に入らなければ、さっさと家出すれ
ばいいのですから。
そんなのが自分勝手などとは思いません。そっちの方が自然
でむしろ人間的であるような気がします。
結婚相談所としてはもちろんいつまでも仲良く暮らしていって
ほしいと願うばかりですが、それは当事者としては余計なお
世話に感じられるのかもしれませんね。
何はともあれそんな時代においては結婚相談所などというも
のは必要ありません。イエスもノーもないのですから、選択
の問題はないのです。
そういう風に見てきますと、当時の若い女性にとって結婚は
何かしら空恐ろしいことのように思えますが、実際はどうだ
ったのでしょう。
お見合いとは言っても、大抵は一回こっきりの儀式みたいな
もので、本人たちは会話することもあまりないし（うつむい
てばっかし）お互いの顔だってろくに見ないのですから、
いいも悪いもよくわかるわけがありません。
それに学校生活でも、他のいろんなところでも男女席を同じ
ゅうせずだったわけで、あんなタイプがいいとこか嫌だとか
いう余地さえなかったのでしょう。
こういうのを難しく言いますと全体最適だけがあって（社
会秩序のためには何が一番いいか）個人最適はほとんどな
し（個人的な好みとかは二の次にする）の時代と言います。
個人最適の時代になればなるほど、結婚相手の選択肢が
広がっていきますから、その分結婚相談の必要性は生まれて
きます。
でも選択肢がないと、結婚相談所などあってもなくてもい
いわけですね。