写真一枚だけで結婚が決まった時代

私の母の結婚は、お見合いすらなかったのです。
父の写真らしきものを見ただけで、母は佐賀県の呼子という小さな港町から、父の赴任先である中国・上海へと単身でお嫁に行きました。

しかも父は特務機関員という特殊な仕事。そんな父と、面識すらないまま、母は東シナ海を渡って異国での結婚生活をスタートさせたのです。

夢のような新婚生活 in 上海

愛情があったのかどうかはわかりませんが、二人きりの新婚生活が存在したことは事実です。
当時は親族との同居が当たり前で、二人だけの結婚生活など夢のまた夢。けれど母は約7年間、上海で夫とともに暮らし、長女と次女を出産しました。

父は職業柄、命がけで中国の大地を駆け回っていたようですが、母にとっては、片田舎の港町から世界最大級の都市・上海へ移り住んだ経験は、興味津々の連続だったのでしょう。

母は、中国の人々の大らかさや人情にとても親しみを感じていたようで、よく私たちに当時の思い出を楽しそうに語ってくれました。

戦後の別れ、そして思い出

終戦で上海から引き上げる際には、多くの中国人の友人たちと涙を流して別れたそうです。
満州からの引き上げのような悲惨な体験とは異なり、まるで夢から覚めたような時間だったと振り返っていました。

日本国内の「結婚」の現実

そんな母の体験に比べると、日本国内での結婚事情はかなり厳しいものでした。
結婚とは、家と家の取り決め。本人たちの思いや愛情などはまったく考慮されず、親同士の合意だけで結婚が決まりました。

結婚後は、夫の親と同居するのが当然で、姑を筆頭とした親族に囲まれた生活。
嫁は無給のお手伝いさんのような扱いを受け、不満を口にすることも許されませんでした。

離婚も「お姑さんの都合」で

今と比べると、当時の生涯未婚率は非常に低かったのですが、それは「結婚する自由」ではなく、「結婚しない自由がなかった」からにすぎません。

離婚率も意外に高く、しかもその理由の多くは、お姑さんに「うちの嫁にはふさわしくない」と判断され、一方的に縁を切られるというケース。
嫁本人が出て行くのではなく、「追い出される」離婚だったのです。

離婚後に実家に戻った女性たちは「出戻り」と呼ばれ、肩身の狭い思いをして生きていかなければなりませんでした。

今の結婚は「夢のよう」

こうして見ると、現代の女性たちの結婚生活は、まるで夢のように自由です。
たとえ相手が一人息子でも、母親との同居を前提とすることはほとんどなく、もし結婚生活がうまくいかなければ「さっさと家を出る」という選択肢もある。

それを「自分勝手」とは思いません。むしろ、人間らしく、自然な選択です。

結婚相談所としては、できることならご夫婦に末永く仲良く過ごしていただきたいと願っていますが、時にそれが「余計なお世話」と感じられることもあるでしょう。

結婚相談所がなかった時代

こうした昔の話を振り返ると、「結婚相談所など必要なかった時代」というものが確かに存在したことがわかります。

なぜなら、そこには選択肢がなかったからです。
「イエス」も「ノー」もない、本人の意思が介在しない結婚。
言い換えれば、選べないなら相談する必要もないのです。

社会の最適と個人の最適

当時の結婚観は、いわゆる「全体最適」の時代でした。
社会の秩序を保つためには、何が一番いいか。それが優先され、個人の好みや希望は後回しにされていたのです。

でも、時代は変わりました。
「個人最適」が尊重される現代においては、結婚の形も多様になり、結婚相談所の役割がますます重要になってきています。

人を選び、暮らし方を選び、人生を選べる今だからこそ、結婚相談所が皆さまの人生に寄り添う意味があるのだと思います。

まとめ

昔の結婚は「与えられた運命」、今の結婚は「自ら選ぶ人生」
選択肢があるからこそ、悩みもあるし、相談の価値が生まれる。
私たち結婚相談所は、そんな現代の「選べる結婚」の力になりたいと願っています。

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