「やっちまったもんはしょうがない」
・・・なんですねえ。
いえ、別に人殺しとか泥棒かという物騒なことじゃなくて。
たとえば、仕事をやりそこなったとか、自動車事故とか、
落第したとか、ビョーキとか、火事とか、、、、些細なことで
は夫婦喧嘩とか、財布を落としたとか、美味しい料理をこげ
つかせたとか、色々あります。
やっちまっ”た”もんは・・・の”た”がついた場合はしょうが
ないのです。でも”た”がつかない場合肝心なのはできるだ
け早く”た”をつけるようにすることです。
歳を重ねれば重ねるほどそれが上手になりますが、若い時
はついいつまでも引きずってしまいがちです。そして長く引
きずれば引きずるほどあなたの大切な人生が無駄になってし
まいます。
何か新しいことを始めるとき失敗を恐れていては何もできま
せん。ただ失敗した時には「やっちまったことはしょうが
ない」と思うことです。事業もそうですし、結婚もそうで
す。いえ、この世に生まれて、生きていくということそのも
のがそうなのだと思います。
そのために他の人を犠牲にしてしまった場合は問題ですが、
それはもう「やられちまったもんはしかたがない」と相手が
いつ思ってくれるかをじっと待つしかありません。
しかたがないとあきらめてくれなかった場合はもうこちらが
「やっちまったもんはしようがない」と割り切るしかありま
せん。世の中はよくあしくもお互い様でできているのです。
恨みつらみは彼岸まで、なんていいますし、最後はしょうが
ないですませてしまうしかないのでしょう。
さて話は少しとびますが、、、、、
「生きていても役に立たない人間と、死んだ方が世の中のた
めになる人間の数とどっちが多い?」。
たまにはそんな意地悪な質問をしたくなることもありますが、
その度に何か虚しくなります。だってそういう自分だって他
の人にそう思われる時だってあるのですから。
もちろん本人はまさか自分のことをそうは思っていません。
それは「この世に幸せなひとと不幸な人のどっちが多い」と
きかれるようなものですから。
そもそも、誰にでも優しい人間というのは、まるで天使のよ
うにも思えますが、他方では油断のならない人間だというひ
ねくれた見方だってできます。だって人が優しくなるのはや
やもすれば相手の弱みを握ったときであって、逆に弱みを握
られた相手にはまず優しくはなれないでしょうから。
ですから多分皆さんが自分の結婚相手を選ぶときは、優しく
なれる相手でも、優しくしてくれる相手でもなく、気を許せ
るような、一緒にいるだけで楽な気分になれる、肩の凝らな
い相手を無意識に選ぶことが多いような気がします。家族と
はそういうものであるし、そうでなければならないような気
がします。変な言い方ですが、運命共同体とはそういうもの
なのでしょう。もしそうでなければ長続きしません。夫婦二
人だけなら、はい、さよなら、もありでしょうが、子どもが
何人もいればそう簡単にはまいりません。
私の父は前半生で運を使い果たしたような人で、私が小学校
に入学する直前に事業を失敗して、一家揃って夜逃げするハ
メになりました。人生初めての挫折が余程ショックだったよ
うで、それからは何をやってもうまくいきません。
それまでに何度も挫折を経験した人であれば、上手に気持ち
を切り替えることができたのかもしれませんが、そんなこと
を言っても後の祭りというものです。僕たち子どもの立場と
してはそのことを不運とも不幸とも親ほどには思っていなか
ったような気がします。この場合はいい意味で、親の心子知
らずということになるのでしょう。父は「やっちまった」と
思っていたのでしょうが、私たち子どもは(少なくとも私自
身は「やられちまった」なんて夢にも思わなかった。
でも母の気持ちは複雑怪奇なものだったのだと思います。自
分だけならともかく子どもたちに惨めな思いをさせてしまっ
たことには慚愧の思いでいっぱいだったでしょう。その父が
息を引き取る寸前に、「ごめんね」と言ったのは、なんと母親
の方でしたっけ。そして父は死ぬ間際なのに(多分)テレて
なぜか英語で返事しました。「ノーノー」だって・・・。
あの瞬間のことは今でも昨日のことにように鮮やかに覚えて
います。なんだったんだろう?あのやりとりは、あの短い短い
会話は・・・・。
だから結婚相談所というお仕事はとても難しいなといつも思い
ます。この人はいい人で、この人はいい人でないとはっきり分
けてしまうととてもじゃないがやっていけないのが結婚相談所
の仕事なのです。
いい家族を築くきっかけをつくるのが結婚相談所のつとめな
のですが、そんないい家族というのは千差万別なのですから
難しいはずです。ただ表面的な釣り合いの良さだけで考える
と失敗します。またそんなことだけで結婚相手を捉えすぎると、
なかなか結婚なんてできるものではないようにも思われます。
いい家族には、その家族だけにわかる素晴らしいドラマが用
意されているのだと思えてなりません。
独身生活をエンジョイしている身には、苦労もない代わり、
そんなドラマもありません。それはそれでとてつもなく寂しい
生き方であるような気がします。早まって結婚したばっかりに
しまった、とほぞを噛むこともあり、でしょうが、それはそれ
「やっちまったもんはしようがない」のでしょうね。