あるブログで若いセラピーの女性の記事が目に留まりました。
ショッピングモールで偶然であったできごとです。
まだ若いお母さんが赤ん坊を抱いて、もう一人五歳位の男の
子を連れていました。
やがて、男の子の方がぐずり始めました。お母さんがいって
きかせいますが、どくなるばかりです。
とうとうお母さんの堪忍袋の緒が切れてしまいました。
モール中に響くような大声で、
”いい加減にしなさい！！”
そして、男の子のほっぺに平手打ちを一発ばしーん！！
一瞬、モール中の空気がこわばりました。幼児虐待じゃん、
通報しないでいいかな、、、、、
そのときでした、ひとりのお婆ちゃんがさりげなく近寄って
いっきました。
お母さんを怒るかと思いきや、
「まあまあ、お母さんも大変やねえ、赤ちゃんが生まれてろ
くに夜も寝てないんでしょう。」
そして次に男の子の頭をなでて、
「ぼく、よく泣いたねえ、偉い偉い！赤ちゃんが生まれてから
ずっと我慢しなさいと言われてきたのよねえ。」
「お母さんもぼくも、偉い偉い」
と二人の頭をなでて去っていきました。
お母さんは、と見ていると、わ〜わ〜わ〜とあたりもはばか
らず泣き出しました。男の子をしっかりと抱きしめて、男の
子と一緒に泣きました。
それを見ていた一人がお母さんにテイッシューを渡しました。
その女性セラピーはどうしていたかというと、ただそんな光
景を見ていただけなのでした。
彼女は、そういうトラブルには原則無関心を決め込んでいた
自分を恥じる前に、激しく嫉妬している自分に気づきました。
「自分にはあんなに、他人のできごとにさりげなく関わるこ
となんてできっこない。」
でも、、、、、他人事を他人として割り切るのは間違ってい
ことに気づきました。今度そういう場面にであったら、、、
しかし、しかし、、、、
多分あのお婆ちゃんのようにはできないだろう。
お婆ちゃんにとっては当たり前のふるまいでしかなかっただ
ろうけど、私にはとてもできっこない。
無理にしたとしても、あんな風にはできっこない。
そういうふうに決心したのはもちろんいいことに違いないの
だが、意識してするのと、意識しないでするのとの間には
えもいえない大きな開きがある。
その違いって一体なんだろうって女性セラピーは思ったので
した。また、こうも思いました。
私があと何十年かして、あのおばあちゃんと同じ年齢になっ
た時にはどうだろう？そりゃなりたいなと思うのはヤマヤマ
だけど、自信がない、ホントにホントになれそうな気がしない。
なりたいけどなれないというのはどういうことなんだろう。
同じ言葉をかければいいというものではない。お母さんが泣
いたのは、言葉そのものではなく、言葉の外にある大きな
心のあり方だったのでしょう。
目に見えないあたたかい想いに身も心もつつまれたからなの
でしょう。
おそらくあのおばあちゃんは、その長い人生で”心の痛み”を
たくさんたくさん味わってきたのでしょう。
だから赤の他人の心の痛みも自分のことのように思えるのか
もしれない。
心の痛みには治療薬はありません。病院はあるにはあります、
精神病院という名の病院が。でも専門のドクターでも癒すこ
とはできません。万感の書物を読んで打つ手はありません。
無力感をただ味わうばかりです。
心の痛みを癒すには、、、、、
同じ心の痛みをもってするしかないのでしょう。
人たちの悲しみや痛みは、自己憐憫ではなく、他人の犠牲に
よって支えられているという哀れさです。
そうして悲しみや痛みは心と心をつなぐ絆となるのだと思いま
す。心の痛みは一歩間違えれば、人をどうしようもなくボロボ
ロにしますが、乗り越えることができれば人の心に新しい境地
を開くもののように思います。
そういえば、むつみ会結婚相談室を立ち上げた亡き母も、よく
会員さんの苦労話を聞いては、自分のことのようにもらい泣
きしていたのを思いだします。
ここは結婚相談所ってより身の上相談所みたいだね、なんて
冗談を言ってましたっけ。
しかし、こういう場面になると男ってのはどうもダメみたい
ですね。