「もし俺のことをまだ待っていてくれているのだったら、生ま
れるはずの子供のために立てていた、(鯉のぼり用の)ポー
ルに黄色いハンカチを提げてくれ。もしハンカチが見えなか
ったら、何も言わずに立ち去るから。」
待っているのだったら黄色いハンカチをあげていてくれ、
という話をきいた欽也と朱美は、勇作を励ます。
「ゆうさん、いこうや夕張へ」
「うん、いこう、いこう、それがいいって」
しばし窓外に視線を泳がせていた勇作は
自分自身を勇気づけるように無言でうなづく。
札幌に向かっていた赤いファミリアは、タイヤをきしませて
カーブを切り、弾むのように走り出す、
夕張へ、夕張へ・・・・・・・・・
しかし・・・・
夕張の町に近づくにつれ、勇作のこころは揺れ、乱れる。
「駄目だ、引き返そう。俺なんかを待っている訳がない」。
口ごもる二人をみて、勇作はとうとう怒鳴りだす。
「俺がいってるんだ、引き返せ、分かったか!!」
「分かったよ、分かったよ、チェッ、ガソリン代の大損だ」
車は仕方なくUターンする。
後戻りの車中ずっと思案顔だった朱美。
「ちょっと待ってよ。もしも・・もしもよ、万が一奥さん
がゆうさんを待っていたとしたらどうするの?奥さんが可
哀そうじゃない」
「それでいいの?ホントにいいの?ねえ、お願いだからさ
あ、ハンカチが上がっているかどうかだけでも見に行こう」
ゆうさんが見れないというんならサア、代わりに私が見て
くるから、ネ、そうしよう」
そして車は再び町に向かって走り出す。
町中に入ると勇作はもう目を開けていられない。
小高い丘の上にある、幸せな結婚生活を送った懐かしい
炭鉱住宅がどんどん近付いてくる。
勇作は固く握りしめた両こぶしを、閉じた両眼の上の額に。
車が停まる。欽也と朱美が車からを降りたつ。
恐る恐るずうっと周囲の風景を見まわす。なにもない・・・?
視線が止まる。一点に釘付けになる。
あった!あったぞ!あれだ、
黄色いハンカチだあ・・。
それは5月晴れの空にへんぽんとひるがえっていた。
一枚だけじゃない、何枚も、いや何十枚も、もうこれ以上
吊るせないというくらい・・・・。
勇作の背中を押すようにして送り出し、若い二人は車をひ
きかえす。車を走らせながら二人の顔はもう涙でグシャグ
シャに歪んでいる。
やがて道端に車を止めるとどとらからともなく激しく抱き合
い唇を交わす二人だった。
さてと、ところです。
あなたはいかが?どうなのでしょうね?
「幸福の黄色いハンカチ」を掲げて待っていてくれる”誰か”
がいますか?
見捨てられた敗残のあなたを待っていてくれる、それでも、
いやそれだからこそ愛してくれる”誰か”はいますか?
そしてまたあなたには、
「幸福の黄色いハンカチ」を掲げていつまでも待ち続ける
”誰か”はいますか?そんな風に愛せるような”誰か”は、、。
人が生きるためになくてはならないものって何なんでしょ
うねえ?ええ、ホントに歳をとるにつれそんなことをしみじ
みと思います。
そして、そんなことなど思いもしない人たちが増えてきたな
あ、なんてことも思います。
ビルが林立する小奇麗な街の風景をどれだけ見まわしてみて
も、「幸福の黄色いハンカチ」はなかなか見つかりません。
粗末な小屋に高々とひるがえる黄色いハンカチが、ときおり
愛おしくてたまらなくなるのです。
昔々の日本の家族の庭にはここかしこ黄色いハンカチがひる
がえっていた(ような)。
貧しいからこそ、そこは心のよりどころとなった(ような)
気もするのです。不思議ですねえ。
順調で幸福な時は、それは誰でも一人で歩けるでしょう。
でも挫折し絶望しそうな時、人は一人で歩けないのだと思
います。
そんな時こそ「幸福の黄色いハンカチ」。ひかりの下のみで
人は生きていけない。闇の中で人の指先は大切なものに触
れ、包み込む大きなひかりに出会う。
そんなことよく知っている老夫婦とか、その家族とかに出会
うとなみだがでてきそうな気がするのです。
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