青年オータニ・ショーヘイは、今まで誰も踏み入れたこと
のない茨の道を、自分の強い意志を頼りに突き進もうとし
ています。
何せ二刀流ですから、人の二倍三倍の努力をしなければい
けません。それで、一日の大半をフィールドで過ごしてい
るし、家に帰ってもほぼ完璧に自己管理に気をつけてい
ます。
、、、なんてこというと、つい修行僧の難行苦行のような
悲壮感が滲む姿を想像したくなりますが、実際の彼を見て
いると、そんな影のかけらもありません。
それどころか他の選手の誰よりも伸び伸びと、明るく、
ベースボール漬けの毎日を心からエンジョイしているよう
なのです。
エンジェルス球団の監督に全試合出場という過酷なスケジュ
ールを決心させたわけもそこにあるようです。
”ショーヘイは心からプレーを楽しんでいます。そういう選
手はタフなんだと。不調でも深刻に悩まないし、失敗して
もくよくよ悩んだりせず、次の試合でそれを生かして、より
良いプレーに結びつけてくる。
チームメートはそういう彼の普段の姿勢をつぶさに見てい
るから、どんなに素晴らしい成績を残しても、妬んだりせ
ずに彼の成功を一緒になって喜ぶし、みんながショーヘイ
が一試合でも多く（自分の出番のチャンスが少なくなって
も）出場してくれることを願ってます。周りが彼の壮大な挑
戦を自分のことのように応援しています”。
だが、今でこそそんな最高のムードが出来上がっています
が、今までは必ずしもそうでなかったことは言うまでもあ
りません。野球のメジャーの世界というのは熾烈な競争の
世界です。競争相手が突出した成功を収めるのを指をくわえ
て見ているわけではありません。
そういう中で彼が今のような成功を手にしたのにはやっぱ
り理由があると思うのです。大多数が懐疑的だった中で、あ
る人たちが人知れず彼のチャレンジを深く理解し支えてくれ
たのだと思います。その最も身近な一人が、六十八歳にな
る老監督であるジョー・マドンです。
マドン監督はこんなことを言っています。
「ショーヘイはどうすれば自分が自分らしくいられるか知
っている。世の中には分析や数字が関係していることが
多すぎる。今の野球界は選手のハートビート（心臓の鼓
動、生命）、つまり本質を軽視し、数字に依存している。
人にはそれぞれ個性がある。決して忘れてならないのはハー
トビートなんだ。心臓の鼓動はみんな異なる。状況もみん
な異なる。表面的なサンプルだけでなく、私はトレンドを
信じている。これまでの経験を通して、パズルを組み立て
正しい結論を出そうとしなければならない。
我々がやったことのないことで彼もやったことのないこと
に対して、制限を設けたり、彼自身が考えてもいないことを
私に考えさせるのはおかしい。
他人のことなのに、何が良いことなのかを知っていると考
え違い人が多すぎる。私はそれとは正反対の人間だ。私は
『あなたにはこれがベストだ』という人に対してとても
腹が立つ。そんなことを私は選手たちにしたくない」。
さてみなさん、みなさんの身近にこんなことを言ってくれ
て、そういう風に接してくれる、くれた人が何人いました
か？親兄弟、学校の先生、先輩、上司、、、もしそういう
人に巡り合えた人はとても幸運な人であり、きっとあなた
も素晴らしい人なんだと思います。
ということでお話は急展開しますが、むつみ会にご相談に
こられた方で、そういう幸運に恵まれた方はすぐわかりま
す。独特のオーラがありますから。
自分の言葉で喋り、他人の視点で世の中を見つめること
ができる。そんな人にはもう肩書きなんか無用で、ただの
装飾品に過ぎません。
誰のでもない、あなた自身のハートビートにとても素直で、
他の人に対しても、表面的なサンプルでなく何より出会う
人のハートビートに耳を傾けることのできる人です。
そして相手にぴったりのパズルを組み立てて、将来のビジ
ョンをはっきりと見ることができる人なのだと思います。
またそういう人はオータニ・ショーヘイのように、日々の
プレーを伸び伸びと楽しむことができます。
そういう人はとってもタフで、不調でも深刻に悩まないし、
失敗してもくよくよ悩んだりせず、次のプレーでそれを生か
すことができます。
結婚難の時代などと言いますが、私たちの目から見るとこ
ろでは、時代そのもののせいというより、意外とそういう
一人一人の心の持ち方に原因が隠れているような気がして
ならないのです。