「それで、結婚願望というのはどうなのでしょう?むつ
み会結婚相談が始まった頃、つまり結婚相談という職種
が生まれて、あっても非常に稀だったころと、当たり前
になった今とでは、変わったと思いますか?」
「半世紀前は結婚したいという願望の他に、適齢期にな
れば、結婚はしなければならない、いい年齢になっても
独身というのは、何か肩身がせまいというのがありまし
た。結婚はしないという選択肢はなかったけど、今はそ
れも選択肢の一つになってきているような気がします」。
「そういう状況の変化の潮目になったファクターといえ
ば、野田さんは、どんなことだと思っていますか?」
「先ほどから触れている、世の中の不景気とか、女性の
経済的自立とかとはもちろん無縁ではありませんが、そ
れだけでは説明できないなと思います」。
「その説明できない事情とはどういったものなのでしょ
うか?」
「結婚しない、というのと結婚できない、というのは違
います。今は後の方、つまり結婚できない、したくても、
ということですね」。
「経済的理由だけで結婚できないというわけではないと」
「そうです。だって昔は経済的レベルで言えばもっと厳し
い状況にあったわけですからね」。
「そうすると、、、経済的理由以外の要因とは?」
「サザエさんというテレビ番組が今も放送されています。
もう半世紀以上も続いている驚異的な長寿番組です。
あの番組の視聴者の年齢層というのが気になります。
おそらく子育て世代は観ていない。
サザエさん夫婦とその子に、弟と妹、父と母からなってい
る家族なんて現実がない。でもあれがかつては家族の普通
のモデルだったわけです。サザエさんファミリーと比べて、
自分たちは幸せとか、そうでないとか思っていた時代が現
にあったんですね。
我が家は三世代で暮らしていますが、町内でもそんなとこ
ろはほとんどありません。この辺りは昔からの一戸建てが
多いんですが、老夫婦二人とか、一人暮らしのお年寄りと
かで、あとはアパートに住まっている若いご夫婦に子ども」。
「核家族ですね。その核家族化についてなのですが、
そのことと未婚化の社会現象との間に何かしら因果関係み
たいなものはあるとお思いですか?」
「一見したところでは、何の関連性もないようですが、実は
大いにあると思います。核化したのは家族だけではないんで
すね。社会の共同体そのものが瓦解した。
地域においても、一応町内会という体裁だけは整っています
が、昔のような持ちつ持たれつという関係じゃない。
かつては向こう三軒両隣なんて言ってましたが、通りの向こ
うなんて誰が住んでいるかなんて知りもしないし、興味もない。
まして車道なんかで隔てられるとまるっきり違う町ですね。
異国と言ってもいいくらい」。
「個人主義の考え方が、時代とともに世の中に浸透してきたと
いうことでしょうね」。
「個人主義へのちょっとした考え違いみたいなものが、ちょっ
とではなくなってきた」。
「考え違いと言いますと、どういうことなのでしょう?」
「個人主義というのは全体主義とかファシズムの反対語なんで
すね。全体の方に比重がかかりすぎて、肝心の一人々々がない
がしろにされてはいけないという考えかたであって、社会の共
同体に対する反対語じゃない。
困った時はお互いに助け合い、幸せは一緒になって喜ぶという
のは、個人の存在にとってはむしろなくてはならない要素なん
だと思います。
ところが、結果的にそういう人と人との絆とか架け橋みたいな
ものがなくなってきた。家族、地域はいうまでもなく、職域の
縁というものも薄くなって、個人主義がなんか極端な孤立主義
みたいなものになってきたように感じます。
すると皮肉なことに今度は全体主義みたいなものが頭をもたげ
てくる。大小無数の共同体が世の中にあって、それが十分に機
能している間は、全体主義の出る幕は少なくなります。
自然な形で社会の秩序ができていますし、周りの人たちとの関わ
り合いの中で、個人も生き生きとしてくる。
そこんところが真空状態になってくると、国とかの行政が人工的
に干渉しなければ世の中が持たなくなる」。
「なるほど、ここにも負のスパイラルが起きてくるわけですね」。
「どんどん人々の孤立化が進んで行って、それが核家族の間にも
現れてくる」。
「そうなると人々の心も、、、、」
「心の貧血症状ですね、まるで」。
「そういう状態では結婚という状況も成り立ちにくくなりますね」。
「今の核家族では、個人の精神的な自立というものも大きく損な
われます。
そうなると逆に家族どうしの相互依存という心理状態が出てくるよ
うに思います。共依存ってヤツですね。
あんたはあんたで自由にやれ、私は私で、、、というふうにはなら
ない。個人主義というと、そうなりそうですが、不思議なことに
そんな逆パターンが現に生まれる」。
「親は子に、子は親に依存している、というのですね。言ってるこ
ととは裏腹に。だとすると婚活にもそれが出てくるわけですね。
それはお互いの思いやりとも異なるもの」。
「そこらへんで結婚相手のステータスというのが前面に出てくるよ
うな気がします。女性も男性もです。生身の人間という要素が薄く
なってくる」。
「人間的な要素がフラットになると、そうならざるをえないとい
うことですね。その点で、女性と男性の違いというのはあると思い
ますか?」
「女性側からすると、結婚願望がシンデレラ願望みたいなものに
すり替わってくる、っていうのかな。
このシンデレラ物語みたいなものは神話の中によく出てくるんで
すね。ただそれが作り変えられて元々のものとは似ても似つかない
ものになった。今あるやつはデイズニー映画のためのフィクション
です。王子様がいて、貧しい娘が見初められるという夢のような話
ですが、あくまでも見果てぬ夢です。
誰もがシンデレラになれるというわけじゃない。ガラスの靴は一
つだけという物語です。
しかも相手の選び方が、王子様という最高のステータスであり、王
子様はというと魔法で最も美しく着飾った女性を選ぶ。
フランス人がこの物語をイヌイットに聞かせた時、イヌイットの大人
たちはびっくりした。フランス人はこんなトンデモナイ話をいつも
子どもたちに話して聞かせているのかって。」
「子ども時代からこんな話を繰り返し聞かされていると、やはり大
なり小なり刷り込まれてくる。男性側からするとどうなるんでしょ
うね」
「ステータスに恵まれた男性は美女を選ぶ。でもその美女の基準と
いうのがあくまで見かけの問題なんですね。はっきり言って薄っぺら
で冗談みたいな話。
スタンダールというフランスの有名な作家に言わせると、彼らの恋愛
は本物じゃ疑似恋愛だと。
例えば趣味恋愛、これは美男美女の恋愛ゲームのようなもので、情熱
という要素は全くない。
それから虚栄的恋愛、周りに自慢するためのもの、自分の虚栄心を満
足させるためのもの。
そうしてある人がいみじくも言ったように、結婚とは美女とカネが
ドッキングする資本主義、、、みたいなものになる。
特定の人種だけのサークルになってしまいかねない」。
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