”理想的な結婚”というと、まず頭に浮かぶのは、不安
要素のない境遇が保障されているということでしょうか。
年功で年々増えていく安定した収入があって、優しくて
聡明な配偶者がいて、家族関係も穏便で、出来のいい子
供が育って、世間から人並み以上に認めてもらえる。
そんな誰からも祝福されるような文句なしの結婚。
そして、三十年か四十年後かは知りませんが、素敵なお
父さん、お母さんから、お爺さん、お婆さんになって、
ああ、幸せな一生だったと言いながら死んでゆく。
画に描いたような人生が前もって約束されているような
結婚(大げさに言えばですけど)。
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僕は昭和二十四年生まれで、いわゆる団塊の世代にあた
ります。丁度小学校の後半あたりから日本の高度経済成
長時代が始まり、年々生活水準が目に見えてよくなって
いきました。
同時に学歴で将来が決まるような、まあ、学歴偏重とい
ってもいい時代になっていきます。
いい高校から、いい大学に進学して、大きな企業か、い
い職業に就く。そして素敵なお嫁さんをもらって、なに
不自由ない一生を送る。そんなまるでエスカレーターの
ような人生設計が可能なのかそうでないのかは別にして、
とにかくそんな夢を見ることができる時代だったのです。
ですから、その通りになったかどうかは別にして、自分が
親になっても、いきおい自分の子どもにもそれを望みます。
それを叶えてくれるできのいい子が親孝行で、でない子は
親不孝。親の悩みの種。
何かそれだけしか幸福な人生のパターンなんかないように
思いこみます。
子どもも親の期待に応えようとして、生きたくもない学習
塾にも我慢してせっせと足を運びます。子どもとしての逃
れられない務めであるかのようにです。
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ただそこは紛れもない競争社会ですから、見事に落ちこぼ
れてしまって、心が折れて、自信を失ってしまうか、ほど
ほどのところで妥協して、世の中ままならないやで、開き
直って生きていくかしかない人も出てきます。
挙げ句の果てはどうなるかといえば、一握りの勝ち組が人
生の勝利者となり、独身女性たち理想の結婚相手で、その
他大勢は人生の落伍者ということになります。
そういうサクセスストーリーが、若い男女性が描く理想的
な結婚の、平均的な、悪く言えばありきたりなカタチなの
でしょう。
そんな一種の思い込みに支えられた結婚のありかたに、
あえて異論をさし挟む気持ちは毛頭ありませんが、僕たち
が同じようにそんな思い込みにとらわれてしまったら、こ
の結婚相談という職業を全うすることはとてもできません
し、あってはならないことだとも思います。
むしろ、今までがどんなにままならない人生であったして
も、自分の未来に夢と希望を失わず、一人の人間としての
自分自身に自信と誇りを持って生きていけるような結婚相
談所にしたいといつも念じています。
そうでないと救いがなさすぎますし、歪んだ世の中になっ
てしまいそうな気がします。そもそも、人生に挫折はつき
ものです。
ハタから見る限りでは文句のつけようのないような家庭で
あっても、たいていの場合は他人には言えないような悩み
を抱えているものです。
方程式の回答を出すように簡単にはいきません。そして、
挫折を乗り越えた人にはどうってことないことでも、挫折
を知らない人にとっては人生の一大事になることままある
ことでしょう。人生塞翁が馬なんて昔の人はよく言ったも
のです。
逆境を肥やしにして、それを飛躍台にして生きていく人も
あります。そんな人々とたくさん出会うことができたのが、
この仕事の妙味だとさえ思うくらいです。
そういう時、人生捨てたもんじゃないな、とつくづく思わ
されます。
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そんな多くの会員さんの中にはこういう人だっていました。
今までの人生は順調だったけど、何かが足りなかったよう
な気がするといって、むつみ会結婚相談室のドアを叩いた
女性もいました。それを人生の節目である結婚生活の中に
探してみたいという決意を秘めて入会されました。
そして世間の一般的な常識から見れば、わざわざどうして
こんなという相手を選ばれたのです。
綺麗で聡明な方でしたから、その気になればいわゆる
”良縁”は山ほどあったにもかかわらず、そういう相手には
目もくれず、選ばれた相手というのが、思春期の娘さん
(難しい年頃と一般に言われていまねす)が二人いて、
かなり年上の男性(前の奥さんとは死別でした)でした。
火中の栗を拾うという言葉がありますが、人生の一大岐路
においてなかなかで思い切れることではないでしょう。
まさか?と僕たちとしてもびっくりしました。しかし、
彼女がおっしゃるには、、、
「私は今まで自分だけのためにしか生きてこなかったよう
な気がする。人のために尽くすということなんて考えもし
なかった。このままズルズルと齢を重ねていったら、きっ
と後で自分の人生を悔やむだろう。今、今までの自分から
脱皮出来なかったら、いつまでたってもできないだろう。
二人の子供を男手一つでここまで育て上げた男性と、お母
さんがいなくて今まで多分寂しい思いをしてきたであろう
二人の娘さんたちに魅かれるものがある。あの人たちの家族
に自分なりの愛情を注いでみたい」。
いや参ったな、、、という思いでした、正直なところ。
そりゃ、頭ではそう考えても、実際に行動に移すとなると
並大抵のことではありません。
相手の男性のお人柄の良さももちろんあったと思います。
それにしてもです、何という勇断でしょう。
そのご家族ともそれ以来長いおつきあいになりましたが、
もちろん波風一つ立たなかったといえば嘘になります。
でも二年三年と経つうちに、目に見えて雰囲気が変わって
きました。
そこには実の親子も及ばないような仲睦まじい、若いお母
さんと二人の娘さんの姿がありました。
(続く)
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