「これ、なあんだ?」
新学期から小学校四年生になる孫娘の美空ちゃんが
一枚の紙切れを広げました。そこには・・・・
「今日」
と書いてあります。
「さてと・・・今日は、っとえ〜と三月、いや四月かな、
そういや今日から四月だから」
二枚目の紙切れを広げます。そこには・・・・
「四月一日」
と書いてありました。ということは・・・
「エイプリルフールだ!」
「いいえ、違います。バツで〜す」。
「え〜エイプリルフールじゃないとすると、なんだろう?」
そばにいた妻が自慢げに言います。
「はい、今日四月一日はジイジとバアバが結婚した日です」。
そうでした。はいはい、私たちの結婚記念日でした。うっかりしてました。
だってね〜〜。
よりにもよってエイプリルフールの四月一日に式場を予約してしまったのは
他ならぬ私めでありました。といってももちろんエイプリルフールが大好き
だったからじゃなく、その日が偶然大安吉日だったから、というだけのお話です。
縁起を担ぐタイプじゃなく、ってより縁起なんてハナから気にしないので、
それなら式場が閑古鳥の仏滅がいいや。結婚式場だって大歓迎してくれるし、
式の費用だってタンと値切れるかもしれんとさもしい根性でいたのですが・・・・。
でも、周りとしてはそうは問屋が卸してくれません。そんな次第で一番手近な吉日の日
曜日を、エイヤっとばかりに予約してみたら、その日が偶々エイプリルフールだったと
はたと気づいたいうだけのことなのでした。
そんな僕たちでも結婚式の案内状を出すときには、いささか心配しました。もらった人た
ちがひょっとすると、こりゃひょっとするとエイプリルフールのジョークかも、なんて
思わないかな?あのシゲハルくんが妻帯するなんて、へ〜たまげた。
・・・という懸念はただの取り越し苦労だったが、肝心の結婚生活そのものはやっぱり
ジョークもどきになったしまったかも・・・・?
そもそもが小生はどうも一事が万事行き当たりばったり(が大好きな)タチらしくて、
十年さき何十年先の己のありようをイメージすることが苦手。行く末が分厚い霧に
覆われていないと生きている気がしない。だって筋書きがハナからわかってる物語
なんて読む気がしないしね。他人のだって、自分のだって同じ。
まあ、自分はそれでいいかもしれないが、連れ合いはそうはいかない。運転手はそれで
お気楽かもしれないが、同乗者は行先不明のクルマに乗せられているような気分だろう。
船でいえば漂流船のようなものかな。どこかの港に着くかもしれないし、海の藻屑と
消えるかもしれない。(でもそれって、結婚そのものがそんなものかもしれないし?)
妻としては「早まった」と思ったかもしれないが、まあ、大なり小なり結婚とはそういう
もんだろう。とはいえ、、、、、
エイプリルフールの、あの日から早や四十数年、不安で眠れない夜もあっただろうが、
なぜか別れ話が話題にのぼることは、なぜか一度もなかったのは今もって不可思議千万。
これはもちろん僕に甲斐性があったわけではなく、愛妻の類まれな度量のおかげだったの
でしょう。
♫
どんなに困難で挫けそうでも、信じることをやめないで
心配ないからね。君の想いがとどく明日がある
最後に愛は勝つ
♫
・・・・なんてね。さて、最初の話に戻ると、
美空ちゃんと、六年生になるハルくんとで、ジイジとバアバの結婚記念日の
ケーキを拵えてた、というわけ。
ハッピーバースデイ、じゃなく、ハッピーウエデイングケーキ。とてもデカいやつ。
結婚して、え〜と、四人分の指を足しても足りない年数が挟まっているわけだから
デカくなっただけなのかな。
あの結婚式の時には四十数年先のことなんか想像もできなかったけど、今にして思えば
あっけない歳月だったような気もする。
幸せっだったのか、それともそうじゃなかったか、なんてことも思ったこともない。
ただずっとなぜだか付かず離れずだったから、離れた場合のことなんか考えたことも
なかった。なんでも本当に大切なものって、なくして初めて身に沁みるもんなんだろうな。
そう思うとちょっと怖い。だってねえ二人とも年々足腰が弱ってきてるし、あんまり先のこ
とは考えたくない。
桜の花びらはあっけなく散ってしまうけど、桜の木はまた来年も爛漫とした花を咲かせる準備を
している。だから何の未練もなく散ってゆく。






















