野生の島に自分を回収に来た宇宙船に向かってロズが
「私は野生のロボットよ!」
って叫んだのには、ちょっと笑って、グッときた。
動物たちと暮らすうちに、ロボットはボロボロのボロット
になってく。工場にいけばすぐまた新品同様のロボットに
のボロットのまんまがいい。
さて、ロボットと野生の関係は不可逆的なのか否か?
というのがこの作品のテーマ?じゃあ、その答えは半ばイ
エスで、半ばノー。ロズが野生の島でインプットした経験
値というデータが、工場で採用された。でもそれでも依然
としてロボットはロボットのまんまなのだから可哀想。
経験値といっても、ロボットは光に届かない、愛を知らない。
なぜってそれはデータでも知識でもないから。
「空の彼方で、明るく輝いて、あたたかい熱を出してい
るものってなあに?」
「それは太陽よ」、、、と答えてオワリなのがロボット。
これを正解(correct answer)というのだが、ロボットの工場に
は正解はあるが”本当”はない。
”本当”には正解(correct answer)のようにcorrectなんかな
いし、そもそもがanswerにしてから、ひどく曖昧である。
だからよくいう、僕なんか特に。
「本当って、どの本当?」・・・・って。
本当の”本”は木の根っこのことで、そこに当たったら本当
となる。
数学の答えは正解であるが、残念ながらこの世のことも人
のことも数式では解けない。では数式で解けなくなると
どうなるかというと、この世の終わりとなるらしい。
コケたら終わりだから二十一世紀を世紀末と言ったりする
が、でもね、野生の生き物はコケてもタダでは起きない。
勝手に世紀末にしないでくれ!
木の根っ子の総延長は1万キロメートル以上(根毛を含め
ると)、根の数は一千万本以上、しかも同じものなど一つも
ない。それが本当に本当。
僕は年老いてボロボロのボロットになっても、ロボットには
ならない。僕は40億光年前から続く壮大な細胞の物語の
一つなのだから。