ぼんくら
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”ボンクラ（盆暗）”というのは、もともと博打用語で盆の
中の賽の目の見えない人のことで、転じて物事の見通し
が効かない、というあまり芳しくない意味で使われていま
す。学校の成績が良くない人もボンクラといってバカにし
ます。
でも私はなぜか昔からこの言葉が好きです。だって、ボ
ンクラがいなきゃシャバは住みにくくてしかたがない。
いや、ホント。日本が現にそうなってます。お利口さん
（まがい）ばっかりで息が詰まりそう。実はボンクラって
のは表に出ない貴重な世の中の潤滑油なのです。盆を読む
ことばかりにあくせくしてる人間ばかりになると世の中が
ギクシャクしてきます。
そんなことを思っていると果たせるかな”ぼんくら”を小説
の題名にした作家がいました。宮部みゆきさんです。大好
きな作家。
主人公はむろんぼんくらを絵に描いたような、中年の、ぎ
っくり腰持ちの、（侍の端くれなのに）ヤットーの方はから
っきしという、ちょっと、というかかなり情けない町回りの
同心です。あっ、名前は井筒平四郎とかなんとか。
定町回り同心といえば江戸の庶民の秩序を守る難しいお役目
です。なのにどうして・・・といいますと、とてももののわ
かった上役（与力）がいまして、
「そのほう（つまりボンクラ）みたいな役人がいなけりゃ
シャバはうまく収まるものも収まらない。今どきの同心ども
は下手人を挙げてナンボとしか考えない奴ばかりで困った
もんだ。そういう次第であるから、頑張れ、いや頑張るな！」
ってなことでケツを叩かれたのです。
褒められたのか、貶されたのかさっぱりわかりませんし、当
然ながらご本人も半信半疑で、恐る恐るで足を踏み出したの
でありますが、まさに上役は慧眼でした。なにしろボンクラは
他のお役人のように威張り散らしたりしませんし、少しくら
いのワルさは気にも止めませんし、長屋住まいの職人さんと
かおカミさんは自分の方からとても気楽に話しかけてきます。
旦那、旦那、、、、って。
そしてくだらない愚痴を聞いてやったりして、だべりまくって、
思いっきり見回りをサボります。優等生だらけの職場（奉行所）
にはたまにしか顔を出さないのに、その日暮らしの貧しい裏
長屋にはうるさいくらい顔を出します。
別に子供が好きなわけじゃないのですが、子供には妙に好か
れます。なぜか？若い頃はナントカ小町と言われていた美人
の細君に言わせると、
「アナタ自身が子どもだからですよ」、ってなことになる。
子どもは仲間を見つけると寄ってくるでしょ、あれだって。
どこが子どもかというと、、、、
ご飯のおかずの中から好きなものばりをよって食べる。
頂き物をするとその場ですぐ開ける。
お菓子なんか一番美味しそうなものに手を伸ばす、
要するに食い意地が張ってる、育ち盛りでもないのにね。
犬猫にすぐかまう、その他いっぱい。
働き疲れた馬が欠伸をしてるような、、、ってのはご面相ばか
りではない、まさに一事が万事なのです。歩き方も仕事のし
っぷりも。そしてあくびしてる間にどんな難事件もいつのま
にか解決してるのですから、これはもう人徳としかいいよう
がないのでしょうね。
熊本の結婚相談所むつみ会は創業五十有余年になりますが、
創業当時は今と比べるとボンクラっぽい人が多かったような
気がします。子どもの数が多かった（二桁とか）というのも
ありますが、相手の選び方もそんなに神経質じゃなかった。
ご本人もご両親もです。結婚して苦労するのもあまり気にして
なかった、というか、苦労して築いていくのが夫婦の仲だし、
家族だと思っていたように思います。
ですから私たち結婚相談所を主催する立場としては本当に楽
でしたし、今と比べると嘘のようにカップルが生まれていま
した。
選びに選び抜いたお相手が結婚生活を共にする時に間違いが
ないかというと、そんなことはないように思います。むしろ
厳選すればするほど期待を裏切られることが多くなるような
気がしますから、おかしなものですね。
期待値が大きすぎると上しか見えなくなって、下があること
をつい忘れてしまいます。それにお互いの期待値が大きけれ
ば大きいほど結婚生活が気を許せる場でなくなっていきます。
相手に多くを望み過ぎない、と言ったら抵抗があるでしょうが、
許容範囲を大きくするということはとても大切だと思います。
その点では優等生ほど、自分に対しても、相手に対しても自然
採点がシビアになるので、つまづきやすいということは言え
るような気がします。
その点ボンクラというのは自分に対しても周りの人に対しても
多くを期待しない、これはこれで許容範囲が大きい、あるいは
器量が大きいと言い換えてもいいような気がします。
そもそも本当の意味合いで優れた人というのはそういうものだ
と思います。少しくらい頭とか容姿がいいとか、お金持ちで
社会的なステータスがあるとかで、人を見下すようになったら
おしまいです。そのツケは周りの人たちを不幸にするというこ
とで払わなけならないのではないかと思います。周りを不幸に
しても自分だけは幸せいっぱいということはありませんし。
結婚相談所もデータだけで万事を考えてしまっているような
気がしますが、そんなものでは決してないような気がします。
結婚というのは最も人間性が求められるのだと思います。で
すから結婚相談所もそのつもりでやっていかないと大変なこと
になりそうな気がします。結婚相談所がお金さえ儲ければいい
ということでやればやるほど、結婚できない人が増え、せっか
く結婚して離婚してしまうというケースが増大していくように
思います。
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