熊本の結婚相談所奮闘記①

熊本の結婚相談所むつみ会のブログ

2023.07.5
婚活コラム

熊本の結婚相談所奮闘記①
＊
亡き父と母が五十四年前に突然”結婚相談所”なるものを
始めると言い出した時にはいささかびっくりしました。
なぜ結婚相談所”なるもの”というのかといえば、今とは
まさに隔世の観というところで、日本中見渡しても、そん
な職種もなければ、結婚適齢期の男女を会員制にしてマッ
チングしていくという発想自体が全くなかったからです。
しかし、ただの新しもの好きというわけでもなければ、
思いつきに任せて突っ走ったというわけでもなさそうで
した。当時熊本市の婦人会にタブロイドの機関紙を出して
いた関係で、方々の婦人会の方から「うちの息子か娘もも
ういい歳だし、誰かいい相手はいないかしら？」という相
談を頻繁に受けていたのです。
特に当時は茶道とか華道とか料理の教室が華やかなりし頃
でして、そこには結婚適齢期の男女が雲集していたのです。
そういう人たちのプロフィールを匿名で機関紙の掲載した
ところ、問い合わせが相次いだのがどうやらきっかけにな
ったようでした。
そうやって、熊本の結婚相談所が、まさに全国に先駆けて
誕生したのでした。
結婚相談所は看板を上げさえすればすぐさま成り立つかと
言えばそうはいきません。情報が命のビジネスですから最
低限のデータベースは不可欠になります。まあ、三桁以上
は必要でしょう。
幸い上述のような経緯があったので割とスムーズに軌道に
乗せることができました。
ちょうど熊本交通センターがオープンしたばかりの頃で、
そこから歩いてわずか五分程度の、RKK放送局の正面のビル
の一室にオフィスがあったので地の利にとても恵まれていま
した。何せ熊本県内のバス路線はすべて交通センターにやっ
てくるのですから。今のようにどこに行くにもマイカーとい
う時代とは程遠かったので、利用者にはとても好都合だっ
たのでした。
ただ結婚相談所という職種自体が社会的に全然認知されて
いなかったので、勘違いも少なくなかったようでした。
つまり結婚生活にまつわるよろず悩み相談とか、人生相談
のようなものですね。
子どもの縁談がまとまりかけているが、相手のことをもっ
と詳しく知りたいので調べてくれとか、果ては離婚すべき
かどうかとか、家庭内のいざこざの悩みとか、経済的な問
題とか、見当違いの来店者もありだったようです。
でも父も母もにべもなく追い返したりしないで、まあモチ
ロンできる範囲内ではありますが相談相手にはなっていた
ようでした。
謝礼などナシですから、よせばいいのにと思いますが、何
せ明治生まれと大正生まれのすることですから、ケッコー
マジでお付き合いしていました。
ビジネスとしての結婚相談所を始めたつもりだったのでし
ょうが、結婚相手を探しに来た人にしても、おカネに困っ
ているような人にはつい同情してしまって、手数料フリーに
してまったりとかで、お金儲けにはまるっきり縁がなかった
ようです。
熊本の結婚相談所として開業して以来十年以上は競争相手
など皆無の独壇場だったので、その気になりさえすれば、
ひょっとするとビルの一つや二つくらいは建ったのかもし
れませんが、そっちの方面の欲の面はどうやら突っ張って
いなかったようでした。おかげでずいぶん苦労しました。
逆に言いますとそんなふうだったから、熊本の結婚相談所
の競争相手ができなかったのかもしれません。だってちっ
とも儲からないわけですから。
そんなとき財閥系が始めたナントカいう全国組織の結婚相
談所ができたときにはびっくりしました。入会金が熊本の
結婚相談所の百倍くらいありましたから。当方の十年分が
１ヶ月くらいで稼げるわけですから、目ん玉が飛び出すこ
とはこのことです。まあ、そこまではいかなくても、せめ
て十倍くらいはいただいていたら老後の資金ぐらいは心配
しなく済んだだろうなとは、正直なところ思います。後の
祭りという話にしかなりませんが。。。。