「名もなく貧しく美しく」という映画は実話に基づいています。聾唖者同士の結婚という、宿命的なハンデキャップを背負った夫婦の物語です。この実在の男女の物語を、数年前に亡くなった高峰秀子さんが主演し、夫の松山善三さんがシナリオ化して監督した作品としても有名です。
繊細な夫婦愛を淡々と描いた映画
映画は、聾唖者同士の結婚をテーマにして、決してきれいごとに流されることなく、淡々と夫婦愛を描いています。高峰秀子さんと松山善三さんという夫婦が手がけたこの作品は、彼ら自身の私生活を反映させながら、ヒューマニズムという深いテーマに挑戦してきました。
高峰さんが女優を引退した後は、素晴らしい随筆を多数残しました。彼女の随筆には、夫婦愛を築いていく過程での葛藤が鮮やかに描かれています。二人は、私生活を通じてヒューマニズムのテーマを見事に完成させたのです。
南田洋子と長門裕之:異なる夫婦の愛
一方で、南田洋子さんと長門裕之さんという夫婦もいました。二人は、芸能界で有名なオシドリ夫婦として知られ、老後を迎えた際には、長門さんが認知症の妻を献身的に看病している姿が美談として取り上げられました。しかし、この美談には、全国の女性たちから反発の声も上がりました。
長門さんは女好きで有名で、浮気が絶えなかったこともあり、その不器用な愛情表現に疑問の声が上がるのも無理はありません。妻である南田洋子さんは、長門さんの父親の看護を15年にもわたって一手に引き受け、その間、彼女自身のキャリアは家庭に閉じ込められてしまったのです。
夫婦愛の難しさと深さ
南田洋子さんの心境について、長門さんがどれほど理解していたかは疑問です。男性の視点から見ると、甘やかされた自分勝手さが透けて見えることがありました。しかし、南田洋子さんはそのすべてを受け入れて、夫を愛し続けたことは間違いないと感じています。
愛し方にはさまざまな形があり、どの形が正しいかを決めることはできません。それぞれの夫婦が、どんな形であれ、愛し合い、時には傷つきながらも、そのドラマを演じていくものです。
四十年の結婚生活:愛の形の変化
私たち夫婦は結婚して40年になります。恋人時代から婚約、新婚時代、そして二人の男の子が生まれ、大人になり、結婚して孫が生まれました。その間には、私と妻の母親との永訣や、喜びと悲しみ、幸せと苦悩がありました。
四十年という歳月の中で、私たちの愛情の形も大きく変わっていきました。たまには、あの頃の燃え上がるような熱い日々を思い出すこともありますが、不思議なことに、その時代に戻りたいとは思いません。年を重ねるごとに、愛の形は変わり、積み重ねられた膨大な記憶の中で、愛が深まっていったのです。
老夫婦が支え合う愛の力
老いを迎えた夫婦は、もはや躍動感や華やかさはなくなります。しかし、何年も一緒に過ごした時間が支えとなり、二人の間に積もった膨大な思い出が、愛を深め、安定させていくのです。その感覚は、まるで大地に降り積もる時間の塵のようで、心が満たされるような気持ちを感じます。