もう何年前のことでしたか、ハッキリとは思い出せま
せんが、オフィスのブラウン色の木の扉をコンコンと
叩く音がしました。
まあ、もちろん毎日繰り返されることなのですが、な
ぜかその時のことはよく覚えています。
扉を開けると、三十代半ばの素敵な女性が立っていま
した。
「いらっしゃいませ。どうぞ中にお入りください」
「はい、ありがとうございます。お邪魔します。どうも
突然お邪魔しまして」
「いいえ、ちょうどさっきお客様が帰られところで、
よかったです。どうぞそちらのソファにお座りください。
お茶を持ってまいりますので」
ややあって、お互いの自己紹介が済むと、15分ほど他愛
のない四方山話が弾んで、リラックスムードに。
「ところでお尋ねしますが、どんな相手の方がいいと思
ってらっしゃいますか?」
「ええ、私あまり体が丈夫じゃないものですから、
なかなかフルタイムでは働けないんです。そういう事情が
分かってくださる方っていらっしゃるでしょうか?
最近、老夫婦の方が仲良く買い物をしたり、公園をお散
歩されている姿を見て、憧れるというか、羨ましいとい
うか、何かやけに結婚したくなったんです」。
それで今日は、ない勇気を奮って、ここまでやってきて、
そこのドアをノックしたんです、ということでした。
それから二年後、イメージにぴったりの男性との出会いが
待っていました。
自分の病弱のことをお話すると、彼から返ってきた言葉は
こうでした。
「人間生きてたら良いことも悪いこともありますよ。どこ
か体の悪いことだってあって当たり前でしょう」
お二人はきっと、頭に描いていたようなご夫婦になってい
られるのでしょう。私どもとも今もお付き合いさせてい
ただいております。
世の中、仲の良いご夫婦ばかりとは限らないでしょうか、
喜びも悲しみも分かち合える夫婦の姿というのは、人間の
何ものにも代えがたい理想の形なのだと思います。
どなただかは知る由もありませんが、その素敵な姿が彼女
の思いを前に向かせ、私どものオフィスに足を向かわせ、
目の前の扉をノックさせた。
そしてその扉の向こうにお二人の今があったのだと思うと
とっても感慨深い気持ちにさせられます。
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