黒川温泉郷からつづら折りの山道をクルマで
およそ五分のぼると満願寺温泉である。
そこにある「山あいの里・山みず木」の露天
風呂が界隈の温泉の一番人気である。
ここは混浴ではない。男湯、女湯ともに静謐な
渓流沿いにある。しかもときあたかも霜ふる月、
紅葉が湯面に音も立てずに舞うてくる。
なるほど足さず引かず、赤面したくなるくらい
のスッピンな山渓に立つ湯けむりだ。
老いも若きも一糸まとわぬ掘りたての牛蒡のような
すがたを、ここかしこと湯浴みさせている。
傾いてゆく夕陽が時計代わりだ。
バアバはハルくんをだっこして、薄暗い内湯の
浴槽に足を踏み入れたところ、
思いのほか深度があるのに不必要にびっくらこ
いて、こともあろうに坊やを取り落とした、
ドボン・・・・・・緊急避難ってか?
ハルくんったら眼を丸くして、バアバあがろう
お家に帰ろうって、やれやれ・・・
みながお湯をあがるころには
もうたっぷり日が暮れた。
月明かりを頼りに、夜道を行きつ戻りつして
ようやく今宵の投宿先に到着したのは午後六時、
瀬の本ペンション村の入り口、「花ごぼう」は暗闇
のなかに佇立していた。
もう四年前の話だね。
この時ミーちゃんはママのお腹の中にいたんだよね。
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