「言われて思い出した。懐かしいなあ。神社でお祭りがあ
るときとか、たまにね映画大会なんかもあるんだ」
「え〜映画がお外であるの。うわあ、楽しそう。ミーちゃ
んもお外で観てみたいなあ。すると、おうちにはテレビと
かはなかったの」
「うん、テレビはなかったな。その代わり幻燈大会とか、
影絵ごっことかしてたな」
「あっ、影絵はお家でもやってるね。あれミーちゃん大好
き。ジイジのお布団で一緒にネンネするときよくやるよね。
懐中電灯で天井に指人形を写したり、」
「隣のバアバがちょっと迷惑そうだけどね。いつまでもネ
ンネしないから」
「そいでジイジ、幻燈ってなあに?」
「ああ、スライドのことね。そういえばわかるかな?」
「わかんない」
「う〜ん、透明な紙に絵を描いたり、写真を写したのに電
灯を当てて、映画みたいにするやつ。お家でもしたことあ
るような気がするけど、、、」
「今度してみよう、ジイジ。ミーちゃんの書いたのが、うつ
ったらめちゃ楽しそう。お写真もできるんだよね。ミーちゃ
んの好きなカレンダーの子猫ちゃんもできるんだよね」。
「この前ドライアイスもらったでしょう」
「あっ、あの水をかけると白い煙がばあ〜って上がるのね」
「あの白い煙をスクリーンにしてね、ユウレイの写真を幻燈
にして写してみようか」
「うわっつ、それこわすぎ!でもやってみたいな。お友達も
呼んで一緒に見れば大丈夫かな。だけどさあ、ジイジって面
白いってか、ヘンなことよく考えつくよね」
「まあね。ところでと、なんのお話ししてたんだっけ?」
「ええとねえ、神社で夜映画大会とあるってお話し。ところ
でさあ、なんで神社なの?公園とかじゃなくて」
「だってね、公園とかなかったもん。ただのだだっ広い空
き地とかなんかならあちこちにあったけど、電気が神社に
しかつかなかったからね」
「で、神社まで歩いてくの?真っ暗なのにジイジが一人で行
ったの?」
「まさかあ、いくらなんでもねえ、おばあちゃんと一緒に行
くの。おばあちゃんは映画とかお芝居が大好きだったからね」
「へえ、お芝居って劇のことだよね。ミーちゃんも保育園で
やったよ。ちょっと胸がドキドキだったけど、楽しかった」
「うん、ジイジも観てたよ。みんな上手だったんでびっくり
した。」
「いっぱいいっぱいお稽古したからね。でも保育園みたいな
のとは違うよね」
「うん、大人の、お芝居がお仕事の人がするの。ちゃんとし
た劇場、、、いや違うか、みんな芝居小屋って言ってたね。
でもちゃんとした建物でね、椅子じゃなくって升席っていい
ってね、木の枠で四角に区切ってあるところに畳が敷いてあ
るの。大人の人が四人くらい座れるくらいの広さだったかな
あ。それからね花道っていうんだけど、客席の後ろから舞台
に通り道があって、お芝居する人はそこから出てくるの」
「へええ、面白いね」
「うん、ジイジはそんな登場してくるところが大好きだった
んだ」
「どうして?」
「うん、コンバンワなんておとなしく出てくるんじゃなくて、
めちゃカッコつけながら出てくるの」
「難しい言葉で言うとオーバーアクションってやつね」
「あっそれ、ニーニーに言われた気がする。ミーちゃんはオ
ーバーアクションだって。そうかなあ、自分じゃわからない
けどね。」
「それ、あるかも。ミーちゃんは泣く時も笑う時も全力投球
だから。それから人を笑わせるの大好きでしょ。百面相とか
あれは誰にも真似できないよね。大スターだねえ。この前
結婚式に出た時は、すごかったよ。みんながお腹を抱えて
笑ってたもんねえ」
「じゃあ、ミーちゃんみたいにして花道から出てくるんだ」
「そうそう、そしたらね、お客さんがあちこちから声をか
けてね、イヨッ待ってました!とか千両役者!とか、いって
ね、おひねりを投げるの」
「なあに?おひねりって」
「お金を紙に包んだやつ」
「すご〜い、ミーちゃんもおひねり欲しいなあ」
「するとね、カッコつけるのやめてね、おひねりを拾って回
るの。」
「へえ〜カッコ悪いね。でも、保育園の劇でもおひねりがあ
ると嬉しいかなあ。神社ではお芝居じゃなくって映画大会が
あったんだよね」
「うん、それでね、おばあちゃんと二人で真っ暗な夜道をね
トボトボと歩いて行ったんだよね。ローソクの提灯をぶら下
げてね」
「クルマとかないから、みんなそうやって行くんだよね。
みんな映画が大好きだったんだ」
「そりゃね、幻燈は動かないし、声も出ないけど、映画は
動いて、ちゃんとお話しして、泣いたり笑ったり、戦ったり
するからね、それに大きいスクリーンがあるしね」
「でも山の中だから、人はそんなにいないんでしょ」
「いやいや、トンデモナイです。それがね、あっちの森の間
から、山の坂道から、小川の向こうから、田んぼの畦道から
ローソクの提灯がトボトボって歩いてくるの。それがねその
うちに光の流れのようになって、神社の方に向かっていくの。
心細かったのが、どんどんワクワクしてきたなあ」
(続く)