「暗いいのってコワ〜い。おウチのお風呂でもデンキが消え
ると、おゆのなかからオバケがでてきそうだもん。でもパパ
やママと夜のお散歩にいくときは怖くないよ」
「懐中電灯がなくても歩けるもんね」
「ジイジが子どものころは歩けなかったの?」
「お月さまがまんまるだといいけどね、そうじゃないと、ぶ
つかったりコケたりしちゃうんだ。でも、懐中電灯とかなか
ったから、提灯で足元を照らしながら歩くんだよ」
「提灯ってローソクのあかりでしょ」
「よく知ってるね、すご〜い。この前水あかりのお祭り見に
行った時の提灯は、中に電気が入ってました。あれは残念な
がら提灯とは言いません。ホントの提灯はあんなに明るく
なくて、もっと心細い灯なのです」
「でもどうしてコケるの?ミーちゃんは夜のお散歩の時よく
ニーニーと駆けっこしたりするけど、コケたりしないよ」
「今はクルマが通れるように道路が平らにされてるからね」
「ジイジがミーちゃんくらいの頃はそうじゃなかったんだ。
でも凸凹じゃクルマがゆっくりしか走れないね。ニーニー
の駆けっこの方が速いかも」
「ううん、その頃はクルマってほとんどなかったの。荷物運
んだりするときは、ウシさんとかウマさんだね。ウシさんな
んかのんびり屋さんで、食いしん坊さんだから、道端におい
しそうな草とか生えてるとムシャムシャやり出すんだ」
「あ〜っ、そうかあ、それで道草とか言うんだ」
「すごい!そんな言葉よく知ってるねえ。ミーちゃんもジイ
ジのお迎えの時よくやりますねえ、それ。そういや、ニーニ
ーもだったなあ。帰り道なら、ごゆっくりどうぞ、でいいけ
どね、朝方に保育園に行く時は、遅刻しちゃうからね、道草
のためのフリータイムを込みで、早くおウチを出なきゃいけ
ないしねえ。二人ともウシさんみたいに道草名人だね」
「ウシさんがいつまでも動こうとしない時はどうするの?」
「うん、鼻先に付けてるロープを引っ張るんだ。おい、いい
加減にしろよって。するとね、モ〜なんて鳴くんだよ。も
う人間ってのはどうしてそんなにせっかちなんだよって文句
付けてるみたい」
「でもさ、そんなローソクの提灯なんか持ってどこに行って
たの。やっぱりお散歩?」
「いや、何しろ真っ暗けだから、だあれもお散歩なんかに
はいかないねえ。もちろんコンビニどころか、お店だって
遠くにしかないし、第一どこもかしこも閉まってるしね」
「じゃあ、ジイジはどこに行ったの?ローソクの提灯ぶら
下げて」
「言われて思い出した。懐かしいなあ。神社でお祭りがあ
るときとか、たまにね映画大会なんかもあるんだ」
「え〜映画がお外であるの。うわあ、楽しそう。ミーちゃ
んもお外で観てみたいなあ。すると、おうちにはテレビと
かはなかったの」
「うん、テレビはなかったな。その代わり幻燈大会とか、
影絵ごっことかしてたな」
「あっ、影絵はお家でもやってるね。あれミーちゃん大好
き。ジイジのお布団で一緒にネンネするときよくやるよね。
懐中電灯で天井に指人形を写したり、」
「隣のバアバがちょっと迷惑そうだけどね。いつまでもネ
ンネしないから」
「そいでジイジ、幻燈ってなあに?」
「ああ、スライドのことね。そういえばわかるかな?」
「わかんない」
「う〜ん、透明な紙に絵を描いたり、写真を写したのに電
灯を当てて、映画みたいにするやつ。お家でもしたことあ
るような気がするけど、、、」
「今度してみよう、ジイジ。ミーちゃんの書いたのが、うつ
ったらめちゃ楽しそう。お写真もできるんだよね。ミーちゃ
んの好きなカレンダーの子猫ちゃんもできるんだよね」。
「この前ドライアイスもらったでしょう」
「あっ、あの水をかけると白い煙がばあ〜って上がるのね」
「あの白い煙をスクリーンにしてね、ユウレイの写真を幻燈
にして写してみようか」
「うわっつ、それこわすぎ!でもやってみたいな。お友達も
呼んで一緒に見れば大丈夫かな。だけどさあ、ジイジって面
白いってか、ヘンなことよく考えつくよね」
「まあね。ところでと、なんのお話ししてたんだっけ?」
「ええとねえ、神社で夜映画大会とあるってお話し。ところ
でさあ、なんで神社なの?公園とかじゃなくて」
「だってね、公園とかなかったもん。ただのだだっ広い空
き地とかなんかならあちこちにあったけど、電気が神社に
しかつかなかったからね」
(続く)
