江戸は当時としては世界一の大都市であり、
また忘れてならないのは、世界一の清潔都市でも
あったことである。
花のパリなど言うが、排泄物は往来に垂れ流しの
ありさまだった。
江戸の清潔さの秘密は究極のリサイクル、汚穢
(おわい)舟である。
汚穢、すなわち長屋の共同トイレの排泄物は大家
の貴重な収入源だった。
そのおわいにもランクがあり、
ピンとキリでは買い取り価格が5:1、
いいものを食べている人種のおわいを撒いた畑
から収穫した大根はそりゃもう美味に決まっている。
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あるとき、お城の殿様がさる料亭にお忍びでおい
でになり、ふろふき大根をお召しになったとか。
そしておっしゃるには、
「これ亭主、この前食した大根料理と比べるとち
と味がおちるの」
「はっ、殿様、そうでございましょう.先般の大
根は最高級のおわいでつくったものでございました」
「なに!おわいとな。これっ亭主、ではそのおわい
とやらを早速持ってきてこの料理にかけておいやれ」
