熊本の結婚相談所むつみ会のブログ

お注射の時間よ

お注射の時間よ

子どもたちがまだ小学生の頃だったかなあ、三ヶ月く
い入院した。ぼくは入院生活というのが大好きで、
なぜかといえば威張って休めるし、大事にはしてもら
えるし(なんせ病人だから)、時間が有り余ってるから、
日ごろ読めない本も読めるしで・・・。
同室に気のいい仲間がいて、おまけにジョークがわかる、
チャーミングなナースがいれば、それはもう桃源郷。

そこは田園の中にポツンと建っている二階建ての小さな
古い病院だった。
蛙の合唱がBGMの病室で、真夏の暑い盛りを二十四時間
エアコンをきかせてブラボーな毎日を送っていた。
しかも、そこにはなんと幸運にも、ぼく好みの一人の
ナースがいたのだった。
ただ彼女は、よく集中力をおいてけぼりにするという悪
い癖があって、なにやらあらぬことか怪しからぬことか
知らねども、そんなこんななんか思ったりしながら
注射をしたりするのであった。
当然、ぼくなんかいの一番に、犠牲者の一人にされたの
でった。
プスっと刺さった注射針は血管からずれていた。
そりゃ鈍感なぼくじゃなくともわかる。とても痛いし。
拷問みたいなもんかな。
こりゃやり直しだな、と思っていると、彼女の表情に浮
かんだかすかな変化をぼくの両眼は見逃さなかった。
翻訳させていただきますと、
「エイ、も〜めんどくさ!面倒くさ、このままやっち
ゃえ」みたいな・・・バレなきゃいいや、みたいな。
ぼくとしては当然彼女に抗議したのだった。
「よっ!いま、まっいいか、なんて思わんかった?」
彼女はにやっと笑って言ったものだった。
「バ〜カ」って。
何が「バ〜カ」だよっての。せめて「ごめん、痛かった」
くらいはいえよ、ったく。
そのときぼくは、きっと彼女はいつか手術室で患者のお
腹にハサミかなんかおき忘れるな、と思わざるをえなかっ
た。

ある日の事いつものように注射をすると、らしからぬま
じめな顔で僕を見つめて言った。
「あのね、野田さん・・・・・」
何故か胸が少しどきどきした。
ぼくには妻も子もいるんだぞ。
続けて彼女はいった。
「わたし、昨日の夜彼氏にふられちゃった」
なんだそんなことかよ、どきどきして損したっと。
しかしそんな話題を振られた以上、何か一言、センパイら
しい一言も言わなくっちゃ。
「そりゃいいこっちゃ。オンナはね、ふられたオトコの
数だけ、モノホンのオンナになる、うん」
やや間があって、彼女は切り替えしてきた。
「野田さんの場合はどうだった?」
ぼくは答えた。
「そうだな、ぼくの場合は・・・えーと、振られたオト
コ(じゃなかったオンナ)の数だけ、やっぱ自信失った」
少しくらいは慰めになったのだろうかねえ、まさかね。
それから三年後お嫁に行ったと風の便りで、、、
今頃、どんなお婆ちゃんになっているのやら。

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